2019年5月30日
「日本人の配偶者等」について
「日本人の配偶者等」は、日本人の配偶者または子どもがもらえるビザです。
後に説明する「永住者の配偶者等」と合わせて、「結婚ビザ」と呼ばれることもあります。
該当範囲
入管法には、「日本人の配偶者等」の身分又は地位について、以下のとおり規定されています。
「日本人の配偶者若しくは特別養子又は日本人の子として出生した者」
具体的には、次の(1)から(3)の身分を有する者が該当します。
(1)日本人の配偶者の身分を有する者
※「配偶者」とは、現に婚姻関係中の者をいい、相手方の配偶者が死亡した者又は離婚したものは含まれせん。また、婚姻は法的に有効な婚姻であることを要し、内縁の配偶者は含まれません。
※法律上の婚姻関係が成立していても、同居し、互いに協力し、扶助しあって「社会通念上の夫婦の共同生活を営む」という婚姻の実体を伴っていない場合には、日本人の配偶者としての活動を行うものとは判断されません。「社会通念上の夫婦の共同生活を営む」といえるためには、合理的な理由がない限り、同居して生活していることが必要となります。
※日本の民放では同性婚が認められていないため、地方自治体の条例等でパートナーシップを認められている場合でも、同性のパートナーはこの在留資格における「配偶者」とは認められません。
(2)日本人の特別養子の身分を有する者
※法律上の特別養子の身分を有している者をいいます。特別養子縁組は、民法第817条の2第1項の規定に基づいて家庭裁判所の審判により成立し、生みの親との身分関係を切り離し、養父母との間に実の子とほぼ同様な関係が成立します。
※一般養子縁組の成立による一般養子の身分を有する者の場合は「日本人の配偶者等」にはあたりません。年齢によって「定住者」または「家族滞在」の在留資格を得ることができる場合があります。
(3)日本人の子として出生した者の身分を有する者
※「日本人の子として出生した者」とは、日本人の実子をいい、嫡出子のほか、認知された嫡出でない子等が含まれますが、養子は含まれません。
※①出生の時に父又は母のいずれか一方が日本国籍を有していた場合、または②本人の出生前に父が死亡し、かつ、その父が死亡のときに日本国籍を有していた場合が、これに当たります。しかし、本人の出生後にその父又は母が日本国籍を取得しても、そのことにより当該外国人が「日本人の子として出生した者」にはなりません。
※本人の出生後に父又は母が日本国籍を離脱した場で合も、日本人の子として出生したという事実には影響がありません。
※「日本人の子として出生した者」は、「本邦で出生したこと」が要件とされていないので、外国で出生した者も含まれます。
審査のポイント
1 日本人の配偶者の身分を有する者
「日本人の配偶者」の場合は、偽装結婚ではないかどうかを入念にチェックされます。
夫婦の年齢が離れている場合や、外国人との結婚・離婚を繰り返し行っている人の場合は、特に厳しくチェックされます。
法律上で結婚が成立していて、住民票上は同居していることになっている場合でも、上述した「社会通念上の夫婦の共同生活を営」んでいるかどうかを、電話や実地調査などで入管から確認される場合もあります。
2 日本人の子として出生した者の身分を有する者
パスポート等により、懐妊時期に両親が同一地域に滞在していたかどうかの確認が行われる場合があります。出生証明書の偽造・変造や、親の年齢、婚姻時期等の記載などに矛盾がないかを確認される場合もあります。
3 日本人の特別養子
戸籍謄本によって、特別養子であることの確認が行われます。
「短期滞在」から「日本人の配偶者等」への在留資格変更許可申請
「短期滞在」から他の在留資格への変更については、「やむを得ない特別な事情」があることが必要です(入管法20条3項但書)。
「日本人の配偶者等」への在留資格変更許可申請における「やむを得ない特別な事情」がある場合とは、次のような場合をいいます。
1 婚姻等の身分関係の成立・存在があり、信ぴょう性が認められる場合。
2 日本人の子である場合。
3 「短期滞在」での在留中に在留資格認定証明書が交付された場合。
「経費支弁能力」について
「経費支弁能力」とは、日本で生活する上でかかる費用を支払うことができる能力のことです。この「経費支弁能力」も、審査の対象となります。
つまり、①給与などの収入、②預貯金・不動産などの資産などにより、配偶者や子どもと一緒に生活ができるかどうかが審査されます。
日本人の方の雇用契約書や預金通帳のコピー、身元保証人による生活費用負担の誓約書などで、証明することになります。
具体的にいくら以上の収入や資産があればOKかということは公表されていませんが、同居人一人あたり年間80万円~100万円程度の費用がかかると計算し、それ以上の収入や資産があると、審査に通る可能性は高くなります。
別居している場合について
配偶者の場合は、上述したように、原則として同居して生活していることが必要となります。
しかし、別居経緯、別居期間、別居中の両者の関係、相互の行き来の有無、生活費の支給等の協力・扶助の関係の有無等に関して説明した資料を提出し、合理性があると判断された場合は、「日本人の配偶者等」の在留資格を与えられることもあります。
離婚調停又は訴訟中の場合
婚姻関係が実質的に破綻している場合は、法律上で婚姻関係が継続していても、「日本人の配偶者等」の在留資格には該当しません。
しかし、夫婦関係調整の調停を提起していたり、配偶者が提起した離婚訴訟に応訴し訴訟提起から1年を経過していない場合など、婚姻関係の修復に向けた努力を続けていると認められる場合は、「日本人の配偶者等」の在留資格を与えられることもあります。
なお、離婚の前に正常な婚姻関係が3年以上継続していた場合は、離婚後に「定住者」への変更が可能になることもあります。
以上、「日本人配偶者等」について説明しました。
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