2019年5月28日
現在の日本の在留外国人のうち、最も多い資格が「永住者(Permanent)」の在留資格です。
就労に制限のない在留資格(永住者・日本人の配偶者・永住者の配偶者等・定住者)は、他の在留資格とは異なり、日本での就労活動の種類や範囲に制限が無い為、他の在留資格に定められている活動や、単純労働の作業なども行う事ができます。
つまり、就労の面では日本人と変わらない取扱いの為、安定した生活を営むことが可能です。
在留資格「永住者」について
「永住者」の在留資格は、「法務大臣が永住を認める者」と規定されています。
その後の生涯を日本に生活の本拠をおいて過ごす者が想定されていますが、最近では、高度人材など、政策的に日本への入国・在留を促進すべき外国人へのインセンティブとして、永住許可をすることも行われています。
「永住者」は、在留活動に制限はなく、在留期間にも制限がありません。
しかし、在留資格が取消されることはあり、退去強制事由に該当すれば退去を強制されることもあります。
「永住者」の審査における基本的な考え方は、「①相当期間日本に在留した間の②在留状況に問題がなく、③将来にわたってその在留に問題がないことが想定される」ことです。
「相当期間」とはどのくらいなのか、何をもって「問題がない」と判断するかということが、ポイントとなります。
該当範囲
法務大臣が永住を認める者
永住許可の法律上の要件
「永住者」の許可の要件は、入管法第22条第2項に規定されています。
「法務大臣は、その者が次の各号に適合し、かつ、その者の永住が日本国の利益に合すると認めたときに限り、これを許可することができる。
(ただし、その者が日本人、永住許可を受けている者又は特別永住者の配偶者又は子である場合においては、次の各号に適合することを要しない。)
一 素行が善良であること。
ニ 独立の生計を営むに足りる資産又は技能を有すること。」
以下、各要件について詳しく説明していきます。
1 素行が善良であること(素行善良要件)
「素行が善良である」とは、以下のいずれにも該当しない場合をいいます。
(1) 日本国の法令に違反して、懲役、禁錮又は罰金に処せられたことがある者。(ただし、刑の消滅の規定の適用を受ける者又は執行猶予の言渡しを受けた場合で当該執行猶予の言渡しを取り消されることなく当該執行猶予の期間を経過し、その後更に5年を経過したときは、これに該当しないものとして扱う。)。
(2) 少年法による保護処分が継続中の者。
(3) 日常生活又は社会生活において、違法行為又は風紀を乱す行為を繰り返し行う等素行善良と認められない特段の事情がある者。
2 独立の生計を営むに足りる資産又は技能を有すること(独立生計要件)
「独立の生計を営むに足りる資産又は技能を有する」とは、日常生活において公共の負担となっておらず、かつ、その者の職業又はその者の有する資産等から見て将来において安定した生活が見込まれることをいいます。
つまり、生活保護を受給しておらず、現在及び将来においていわゆる「自活」をすることが可能と認められる必要があります。
なお、独立生計要件は、必ずしも申請人自身が具備している必要はなく、申請人が配偶者等とともに構成する世帯単位で見た場合に安定した生活を続けることができると認められる場合には、これに適合するものとして扱われます。
3 法務大臣が日本国の利益に合すると認めたこと(国益要件)
「日本国の利益に合する」とは、以下のいずれにも適合する場合をいいます。
(1) 長期間にわたり日本社会の構成員として居住していると認められること
「長期間」とは、原則として引き続き10年以上日本に在留していることをいいます。そして、この10年以上の期間のうち就労資格又は居住資格をもって引き続き5年以上本邦に在留していることが必要となります(本邦在留要件)。
そして、現に有している在留資格について、最長の在留期間をもって在留していることが必要となります。多くの在留資格において「最長の在留期間」は「5年」ですが、当面の間は、在留期間「3年」を有する場合は、「最長の在留期間をもって在留している」ものとして扱われます。
(2) 納税義務等公的義務を履行していることを含め、法令を遵守していること
所得税、住民税などの納税に加え、最近では、年金の納付についても厳しくチェックされます。
(3) 公衆衛生上の観点から有害となるおそれがないこと
麻薬、大麻、覚せい剤の中毒者などは「公衆衛生上の観点から有害となるおそれがある」と判断される可能性が高いです・
(4) 著しく公益を害する行為をするおそれがないと認められること
現在及び過去の行状等から総合的に判断されます。
(5) 公共の負担となっていないこと
「公共の負担」とは、生活保護などを受けていることをいいます。
日本人、永住者又は特別永住者の配偶者及び子の場合は、独立生計要件を課されていないため、公共の負担となっていたとしても、そのことのみで、永住許可の法律上の要件を満たさないとされることはありません。
永住許可の要件の特例
永住許可申請をする人が以下のいずれかに該当する場合は、特例として永住許可の要件が緩和されます。
なお、2つ以上に該当する場合は、それぞれに定める特例を適用し、もっとも有利になる取扱いをされます。
1 日本人、永住者又は特別永住者の配偶者、実子又は特別養子
(1) 素行善良要件及び独立生計要件に適合する必要はありません。
(2) 本邦在留要件は以下のとおりです。
ア 配偶者については、実体を伴った婚姻が3年以上継続し、かつ、引き続き1年以上本邦に在留していること。
イ 実子又は特別養子については、引き続き1年以上本邦に在留していること。
2 日本人、永住者又は特別永住者の養子(特別養子を除く。)
素行善良要件及び独立生計要件に適合することを要しない。
3 難民の認定を受けている者
(1) 独立生計要件に適合することは必要ありません。
(2) 本邦在留要件については、引き続き5年以上本邦に在留していることで足ります。
4 「定住者」の在留資格を有する者
本邦在留要件については、「定住者」の在留資格を付与された後、引き続き5年以上本邦に在留していることで足ります。
「日本人の配偶者等」の在留資格を有していた者が在留資格変更許可を受けて「定住者」の在留資格をもって在留しているような場合、「定住者」の在留資格を付与された後、引き続き5年以上本邦に在留していないときであっても、「日本人の配偶者等」の在留資格での在留と合わせて5年以上であれば、この要件に適合するものとして扱われます。
5 「高度専門職ポイント」が70点以上の者で、以下の(1)または(2)に該当する者
(1) 「高度人材外国人」として、3年以上継続して本邦に在留していること。
(2) 3年以上継続して本邦に在留している者で、永住許可申請から3年前の時点を基準として、「高度専門職ポイント」が70点以上を有していたことが認められる者
6 「高度専門職ポイント」が80点以上の者で、以下の(1)または(2)に該当する者
(1) 「高度人材外国人」として、1年以上継続して本邦に在留していること。
(2) 1年以上継続して本邦に在留している者で、永住許可申請から1年前の時点を基準として、「高度専門職ポイント」が80点以上を有していたことが認められる者
「本邦在留要件」に関するそのほかのポイント
・原則として、10年以上在留していれば要件を満たしますが、10年以上在留していれば当然要件を満たすということではなく、在留状況などから総合的に判断されます。
・10年以上在留していない場合でも、義務教育の大半を日本で受けていた人や、配偶者または親が永住許可相当と判断される人は、永住許可の可能性があります。
・原則として現在の在留資格の在留期間が3年以上でなければ要件を満たしませんが、「家族滞在」の在留資格を持っている人は、扶養者が永住許可相当と判断される場合、3年未満の在留期間でも永住許可の可能性があります。
・「留学」の在留資格を持っている人は、親が永住許可相当と判断される場合、永住許可の可能性があります。
ここまでは主に「永住者」という在留資格の要件や用語の意味の解説、特例について説明しました。
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